| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-006  (Poster presentation)

腐朽木摂食昆虫種間の腐朽木破砕量の差異ー口器形態との関連

*瀬口翔太, 澤畠拓夫(近大院・農)

枯死木は、落葉と並び、陸上生態系における主要なバイオマスを占め、その分解は物質循環において極めて中心的な機構である。枯死木の分解は主に真菌類の化学的分解(酵素による腐朽)と昆虫類の物理的分解(摂食による破砕)によって進行するが、腐朽を受けた枯死木=腐朽木の分解における昆虫類の影響は、定性的な理解に留まる。その理由は、腐朽木の分解速度に影響を及ぼす要因が多様かつ複雑であるため、初期のモデルの質が統一困難であることに起因する。そこで本研究では、腐朽木のモデルの質を可能な限り均一化するために、シイタケホダ木をモデルに、コクワガタ・オオゴキブリ・カブトムシ(以下コクワ・オオゴキ・カブト)の飼育試験を行い、昆虫種による腐朽材の破砕量を測定し、その種間差を口器形態および摂食様式から比較検討した。飼育試験から、全種腐朽木の破砕分解に大きく貢献することが明らかとなり、破砕量はカブト<オオゴキ=コクワとなった。野外における摂食様式調査では、コクワとオオゴキはいずれの硬度でも材内に穿孔していたが、カブトは摂食部位の硬度が低い場合のみ材内に穿孔し、高硬度の場合は倒木の下部から抉るように破砕を行っており、腐朽木摂食者の破砕量と破砕方法に種間差が認められた。同上科に属するクワガタムシ科5種とカブト間で口器形態を比較した結果、カブトを含めて、腐朽木の低硬度部位に限り穿孔を行う種の大顎外縁は湾曲し、高硬度部位に対応する種の大顎外縁は直線的である傾向があり、これらの種の口器は、穿孔部位の硬度に対して適応的であることが示唆された。以上から、カブトが高硬度の腐朽木に穿孔を行わず、他種と異なる破砕方法を取る原因は口器形態にあり、それが破砕量の差に繋がったと考察された。


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