| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-007  (Poster presentation)

内モンゴル草原における植物種多様性操作による地上部節足動物群集の多様性の変化

*橘太希(横浜国立大学), 内田圭(横浜国立大学), 岩知道優樹(横浜国立大学), Xiaoming Lu(中国科学院植物研究所), Xuezhen Zhao(中国科学院植物研究所), Yongfei Bai(中国科学院植物研究所), 佐々木雄大(横浜国立大学)

近年、人為的な環境改変や世界規模での気候変動により、生物多様性の減少が危惧されている。気候的極相としての自然草原は地球上の陸地面積の約25%を占めているが、放牧や牧草の刈り取りといった自然草原における人間活動は、一次生産を担う植物を利用することで、自然草原における生物多様性を変化させていると考えられる。この様な背景から、草地の生態系における生物多様性と生態系機能の関係を明らかにする研究として、植物種多様性操作実験が行われるようになってきた。しかし、これまでの研究では、同一栄養段階の多様性の変容や生態系機能への影響に着目してきた一方で、他の栄養段階を含む生物多様性全体の変容を見過ごしてきた。そこで、本研究では植物多様性の変化が生物多様性全体に与える影響を明らかにする第一段階として、送粉や植食によって植物群集との直接的な相互作用を持つ地上部節足動物群集への影響を明らかにした。本研究では、中国内モンゴル自治区の自然草原に設置された植物除去操作プロットで調査を行い、播種により植物群集を人工的に構築した先行研究との比較を行った。また、植物多様性の変化による節足動物群集全体への影響に加え、群集が変容する過程で見られる生態系プロセスと直結している節足動物のギルド(食性)への影響を明らかにした。
過去の植物除去操作の影響は植物の個体数に対して残っていた。また、植物種数・個体数の増加は、概して節足動物の種数・個体数を増加させたことから、過去の植物除去操作は間接的に現在の節足動物群集に影響を与えていることを示唆している。その一方で、植物種数と節足動物種数には有意な相関は見られなかった。これは先行研究の結果とは異なっており、人工群集ではランダムな種選択による植物群集合成を行っているため、本来自然草原で見られる複雑な種間相互作用を考慮できないことを示唆している。


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