| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-010  (Poster presentation)

春日山原始林における鳥類の種子散布ネットワーク

*岡本真帆(大阪市大・院理), 大矢樹(大阪市大・院理), 田原大督(大阪市大・理), 伊東明(大阪市大・院理), 名波哲(大阪市大・院理)

果実食鳥類は、長距離の種子散布を通じて植物の更新を促進する。一方、果実は鳥類の個体群を維持するための食物資源となる。本研究では、鳥類と植物の種子散布ネットワークを定量的に評価するために、被食型散布樹種10種を対象とし、訪問した鳥類種、個体数、滞在時間、採食果実数を記録した。奈良県春日山照葉樹林において、2016年と2017年の2年間、1樹種につき1~3個体、1個体につき3日間で合計10時間の目視観察を行った。その結果、全体で24種の鳥類が訪れ、16種による採食行動が確認された。各樹種に対する訪問頻度や訪問1回あたりの採食果実数は、鳥類の種によってさまざまであった。採食行動が確認された鳥類種の中で、メジロ、ヒヨドリがそれぞれ8樹種、7樹種の果実を採食しており、さらにキツツキ科のコゲラも6樹種の果実を採食し、これら3種が春日山で特に重要な種子散布者であると考えられた。植物側に注目すると、クマノミズキでは1年間で8種、カラスザンショウでは2年間で11種の鳥類による採食行動が確認された。他の樹種に比べて夏鳥や冬鳥が占める割合が高かったことから、これら2樹種の果実は、留鳥だけでなく渡り鳥にとっても重要な餌資源になっていることが示された。果実サイズと鳥類の嘴サイズの関係を見ると、嘴サイズが小さいメジロは小さいサイズの果実をより好み、嘴サイズが大きいヒヨドリは小さいサイズから大きいサイズの果実まで幅広く採食していた。エゴノキの種子はヤマガラだけに採食され、1対1の関係が見られた。ネットワーク解析により樹種と鳥類のネットワーク構造を評価したところ、nested構造、one-to-one構造、modular構造が見られ、種子散布を通じた鳥類と樹木の共生関係は、様々な構造から成り立っていることが示された。


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