| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-011  (Poster presentation)

開花ステージに合わせたササユリ葉の抗菌活性変動

*花﨑直史(京都工芸繊維大学), 秋野順治(京都工芸繊維大学), 柳川綾(京都大学), 荒井滋(大神神社)

奈良県の大神神社の摂社である率川神社では、大宝元年(701年)より国事として無病息災を祈祷する神事を執り行い、ササユリLilium japonicum を御神花として奉ってきた。この御神花ササユリが、神事の象徴として奉じられてきたのか、実質的な薬効を恃んでいるのかは議論が分かれるところである。演者らが一般的な疫病に寄与する真菌類を対象としてその抗菌活性を検証したところ、2016年度・2017年度の本大会で報告したように、ササユリの花香成分と葉表皮ワックス成分に抗菌活性成分が含まれることが判明した。本研究では、ササユリ葉部に含まれる抗菌活性物質の開花ステージに応じた変動を検証した。蕾のサイズが約1cm・2cm・5cmの各蕾期、開花期、枯花期、落花期、蒴果形成期のササユリの最上位葉を各5枚採取し、個別にヘキサン20mLで10分間浸漬抽出を行った。各抽出物50µLをペーパーディスクに処理し、クロコウジカビAspergillus niger の分生子1.0×103個を一様に塗布したPDA培地上で、25℃・48時間培養し、後に形成された阻止円の大きさを計測・比較した。その結果、1cmの蕾期・5cmの蕾期~落花期では安定的に抗菌活性が見られる一方、2cmの蕾期や蒴果期には抗菌活性が認められない株が複数存在した。そこで、安定的に最上位葉で抗菌活性が認められた蕾期(4cm程度)、開花期・落花期において、各株の最上位葉と最下位葉を採取し、同様に抗菌活性を比較した。その結果、蕾期では最下位葉の方が強い抗菌活性を示すのに対して、落花期では最上位葉の方が強く抗菌活性を示すことが確認できた。これらの結果は、受粉・種子形成に合わせてササユリの葉の抗菌活性が変動しており、それはおそらく受粉期の柱頭や形成される種子の保護に役立つものと考えられる。


日本生態学会