| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-016 (Poster presentation)
同所的に生息する植食性昆虫の多種共存機構の1つとして、餌資源を分け合う資源分割は、古くから着目されてきた。しかし実際には、餌資源を共有しながらも、同じ生息域で共存している例は数多く存在する。このような現象に対しては、これまで、種間競争や繁殖干渉のような植食者間の生態的要因、あるいは天敵との相互作用によって共存の仕組みが考えられてきた。その一方で近年、餌となる植物の葉に含まれる化学成分の組成が、同種あるいは他種植物といった競争者の違いによって可塑的に変化することが報告されている。このような、植物の競争環境の違いによってもたらされる葉形質の変異は、植物を餌として利用する植食性昆虫の資源利用様式に影響を与えると予測できる。本研究では、タデ科多年生草本のエゾノギシギシとその植食者であるコガタルリハムシおよびイチゴハムシを用いて、種内または種間という異なる競争環境に応じた葉形質の変異がハムシ2種の資源利用様式に与える影響を検証した。具体的には、1) 野外の異なる競争環境下のエゾノギシギシおよび異なる競争環境に曝して栽培したエゾノギシギシの葉形質の分析と、2)野外の異なる競争環境下のエゾノギシギシをハムシに選択させる嗜好実験を行った。葉形質の分析の結果、エゾギシが種内競争と種間競争のどちらの環境に曝されるかによって葉に含まれる縮合タンニンおよび総フェノール量が有意に異なった。さらに、嗜好実験により、ハムシの資源選択は葉形質の変異によってもたらされ、野外でのハムシ類の分布状況と一致するような2種それぞれの選好性がみられた。これらの結果から植物の競争環境に応じた可塑的な葉形質の変異が、異なる資源利用様式をもつハムシ2種の資源分割を促す要因であると考えられた。