| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-018  (Poster presentation)

放棄二次林における伐採とシカ柵の設置が植物の機能群特性に与える影響

*高木豊大(東京大学大学院), 楠本大(東京大学田無演習林), 鈴木牧(東京大学大学院)

 日本の二次林では,人の管理不足による林床の暗さと,シカの採食によって下層植生が衰退している.上層木の伐採と防鹿柵の設置を組み合わせた既存研究から,伐採による下層植生量の回復が示されているが,伐採後の明るい環境に出現した植物種の性質は不明である.伐採により光資源量が増加し,植物の成長や防御への資源投資が促されて多様な機能をもった植物の生育が可能になり,それによって攪乱に強い植生が成立すると予測される.本研究ではこの仮説を検証した.
 8年前に部分的に伐採を行った放棄二次林の,伐採区と非伐採区に設置した防鹿柵の内外に優占していた植物種について,自然高,SPAD値を測定した.それら植物の葉を採取し,LMA,総フェノール,タンニン,サポニンの含有量を測定した.また,各処理区に5 m×5 mコドラートを設置し,その中に出現した種の種名と被度を記録した.
 PCAによる各処理区における優占種の各形質値の分布をみると,伐採区は非伐採区に比べて,プロットの分布範囲が広く,優占種の形質値の幅が大きかったことが示された.これは伐採により多様な機能をもった植物の生育が可能になったと考えられる.伐採区において,シカの採食以上に成長する種群と,シカの採食を回避している種群は,柵外区では優占度が高く,柵内区ではほとんど観察できなかったが,これは,柵外区では防御戦略をとったため,柵内区では他樹種との競争に負けたためであると考えられる.また,成長の早い種群は,柵内区では優占度が高く,柵外区ではほとんど観察できなかったが,これは,柵内区では成長が早いため,柵外区ではシカの採食により生存が困難なためであると考えられる.一方,非伐採区では,シカを排除して8年が経過しても下層植生が回復しなかった.以上のことから,伐採すると植物の機能が多様になることで生態系機能が向上し,シカの採食や自然攪乱に対する回復力の高い植生が形成される可能性がある.


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