| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-025  (Poster presentation)

森林帯ー高山帯エコトーンにおける開花構造と媒花タイプ間の比較

*水永優紀, 工藤岳(北海道大学)

 山岳生態系では、植物の生育期間と訪花昆虫の構成が標高やハビタットの違いによって大きく変化する。群集スケールの開花構造(開花期間と花資源量の季節変化)は、生物的要因と非生物的要因の相互作用によって形成される。一般に、山岳植物の開花時期は雪解け時期と気温に強く規定されている。一方で、訪花昆虫の有効性が季節的に変化する場合、送粉成功を最大化するようにそれぞれの種の開花時期が調節されているかもしれない。その調節機構は、植物の媒花タイプ間で異なる可能性がある。標高傾度に沿って植物群集を媒花タイプに分けて比較することにより、群集スケールの開花構造を作り出す生物的・非生物的要因を区別することができるだろう。本研究では、森林帯−高山帯エコトーンにおける植物群集の開花構造を媒花タイプと関連づけて明らかにすることを目的とした。
 2015年と2016年に北海道大雪山の標高1100−1600mの登山道約3.2 kmにおいて、訪花昆虫と訪花植物種を毎週記録した。さらに、等間隔に設置した調査プロット内の開花植物種と開花数を毎週記録し、開花構造の季節動態を定量化した。記録された植物種(計111種)は、ハチ媒花(36種)、ハエ媒花(36種)、ハチ・ハエ混合媒花(39種)に分類された。
 標高増加に伴って、マルハナバチ類とハチ媒花植物の割合は増加した。開花開始日と開花ピーク時期は標高の増加とともに遅くなり、個々の種の開花期間は雪解けがゆっくり進む高山帯で長くなった。これらの傾向は媒花タイプ間で共通していた。開花の種間重複は、全ての標高でハチ・ハエ混合媒(ジェネラリスト)の種間で大きく、昆虫の活性の高いシーズン半ばに開花が集中する傾向があった。一方で、ハチ媒植物種の開花重複は最も小さかった。以上の結果から、標高傾度と雪解けパターンは植物群集の開花構造に最も強く影響していた。さらに、高山植物群集の開花構造の形成において、マルハナバチ類の影響の強さが示唆された。


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