| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-065 (Poster presentation)
ヤスデ(Diplopoda:ヤスデ綱)は主に森林土壌に多く生息し、日本国内では約300種が記載されている。野外では落葉や土壌有機物を餌資源として利用しているが、それらの資源量に対する個体数が等脚類などの他の土壌動物と比較すると少ない。森林生態系および土壌生態系における生物多様性を正確に評価するには、生息種を網羅的にモニタリングしていくことが求められる。現在、ヤスデ類の採集法として一般的に用いられている見つけどりという手法では作業者の経験や能力によって採集結果に影響が生じる。その他にハンドソーティング法も広く用いられるが土を掘り取って作業を行うため作業労力が大きく、環境攪乱につながるという意見もある。ピットフォールトラップは作業労力が比較的小さくよく用いられるがトラップの構造上、採集される種が地表徘徊性の種に限定されてしまう。ヤスデを採集対象としたトラップは、他にも湿らせたキッチンペーパーとジャガイモを用いたトラップ(Barber 1997)や枯草ベイトトラップ(Tuf et al. 2015)等これまでにいくつか考案されているが、採集効率の比較や網羅的な採集法について検討したものは少ない。
そこで本研究では、調査環境に生息するヤスデ類を定量的かつ網羅的に採集する手法の検討を行うことを目的として、見つけどり、ピットフォールトラップ、枯草ベイトトラップを元に考案した麦わらトラップおよびミズゴケトラップの他、さらに作業労力が小さく短時間でヤスデを採集することができる手法としてリターシフティングを採用し、5つの採集手法を組み合わせて採集、解析を行った。得られたヤスデの種組成と作業労力を考慮した結果、ピットフォールトラップとリターシフティングの組み合わせによって最も効率よく生息種を採集することができることが示唆された。