| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-071  (Poster presentation)

全球の島における鳥類共起パターン:生態的形質と生息環境の影響

*佐藤恵里, 村上正志(千葉大・院・理)

生態的および進化的プロセスが種共起パターンにどのような影響を与えるのかを解明することは、群集生態学において古典的で大きな課題である。近年、従来のような群集レベルではない種ベースの共起パターンの概念(phylogenetic fields : PFs)が提唱され、生態的プロセスを反映する種の生態的形質との関連付けが可能となった。一方、「島」はその面積や孤立度が明示的に考慮できるため、移入や絶滅・種分化といった進化的プロセスの検出に適したシステムとして、生態学の様々な研究にもちいられている。本研究ではPFsをもちいて、全球の島における鳥類共起パターンへの生態的形質と生息環境の影響を解析した。
 BirdLife International and NatureServe(2015)による全球の10424種の分布データから、100㎢以上の島に分布する現存陸生鳥類5174種を抽出し、既存の系統樹から計算したPFsをもちいて、それぞれの種の形質および生息環境との関係を評価した。解析の結果、全体として系統的に近い種と共起(クラスター)する種が多く、もちいたすべての形質および環境がPFsに影響することがわかった。面積・大、標高範囲・広、降水量・多、季節変動・小の島でクラスターの傾向が見られたが、これはこのような環境で局所的種分化が起こりやすいことを示唆する。また、高緯度の寒冷な島や孤立した島でもクラスターの傾向が見られた。これはニッチや分散の制限により一部の系統のみが定着できたためだと考えられ、熱帯ニッチ保守性仮説を支持する。さらに、体重の小さい種ほど系統的に遠い種と共起する傾向が見られ、島では小さい種で競争的排除が強いのではないかと考えられる。生息地や食性タイプ間でも傾向が異なり、ニッチの変化が種分化や競争の程度に影響することを示唆する。モデル比較の結果、生息地・食性・面積・孤立度・標高範囲が特に強い影響をもつことが分かり、生態的プロセスと進化的プロセスの両方が種共起パターンに重要であることを示した。


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