| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-076 (Poster presentation)
分断景観下の生物はパッチ状となった生息地間を移動することでメタ個体群を維持しており、パッチ内部の環境(局所要因)に加え、パッチ間の連結性や周辺のマトリクス内の土地利用(景観要因)から影響を受けることが知られている。よって、保全に向けた分断化の影響の評価にはこの両要因が考慮されるべきである。また、その際以下2つの点に留意すべきと考えられる。
1.生息地パッチが半自然草原の様に人為的攪乱によって維持されている場合、攪乱の頻度が局所要因を変化させることで対象種に影響を及ぼしている可能性がある。対象種の保全を目標に据えるならば、攪乱による局所要因を介した影響を評価すべきである。
2.景観内のマトリクスと潜在的な生息地との区別は困難な場合が多く、景観要因を正しく評価するためには、マトリクス内の各土地利用を対象種が実際に利用しているかを調査すべきである。
そこで本研究では千葉県柏市, 白井市, 印西市にパッチ状に点在する半自然草地24か所において、複数のバッタ科昆虫を対象にした調査を行い、草刈り頻度による植生を介したバッタへの影響を評価すると共に、マトリクスでのカウント調査を基に個々の種にとっての潜在生息地を特定した上で景観要因の影響を評価した。
結果、局所要因に関しては、草刈り頻度による草丈を介した影響が確認された。その方向性は種によって異なったことから、複数種の出現には草刈り頻度を変えることでパッチ内の草丈の不均質性を維持する必要があると考えられる。また、景観要因に関しては、景観内の潜在生息地やマトリクスから受ける影響は対象種間で異なることが明らかとなった。