| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-087  (Poster presentation)

寄主植物の共有が日本列島に分布するチョウ類の共起パターンに与える影響

*橋本洸哉(京大生態研(現近大)), 中臺亮介(琉球大・理), 岩崎貴也(神奈川大・理), 佐藤安弘(龍谷大・さきがけ)

植食性昆虫の群集集合プロセスにおける種間競争の重要性は、群集生態学で古くから注目されてきた課題の一つである。種間競争が卓越する場合、寄主植物の共有は種間の排他分布を促すと考えられる。一方、資源ニッチによるフィルタリングによって、寄主植物を共有する種はより重複して分布する可能性もある。しかし、寄主植物の共有が広域スケールでの植食性昆虫の分布に与える影響を、特定の生物群全体を対象に網羅的に調べた研究は少ない。そこで本研究では、寄主植物を共有する植食性昆虫が排他分布または重複分布を示すのかを明らかにするため、日本列島に分布する植食性のチョウ232種を用いて、全ての種ペアの寄主植物の類似度と排他分布の程度(Cスコア)との相関を検証した。その結果、検証に用いた2つの空間スケール双方で(10kmおよび1kmグリッド)、寄主植物の類似度とCスコアの間に有意な負の相関が認められた。この傾向は、系統の類似度や前翅長(分散能力の指標)を考慮しても変わらなかった。気候ニッチの類似度(生態ニッチモデリングを用いて推定)を考慮すると、10kmグリッドでのみ寄主植物の類似度とCスコアの間に有意な正の相関が認められたが、その相関は弱かった(Mantel ρ = 0.03)。これらの結果は、種間競争よりも資源ニッチによるフィルタリングの方が、日本列島のチョウの地理的分布パターンをよりよく説明することを示唆している。


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