| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-090  (Poster presentation)

異なる温度で育成させたクロマツ実生近傍の土壌生物の応答:線虫と菌根菌に着目して

*北上雄大, 松田陽介(三重大院生資)

本研究では、異なる温度対するクロマツ実生とその近傍の土壌生物の応答を明らかにすることを目的とした。そのため、ポットを用いてクロマツを海岸砂壌土に播種し、異なる温度で生育させ、土壌中に生息する線虫群集とクロマツに定着する菌根菌を形態的に調べた。海岸クロマツ林分から土壌を採取し、121℃で15分間滅菌した滅菌土壌(S)と非滅菌土壌(N)をポットに各300 ml充填した。表面殺菌したクロマツ種子を各土壌に播種し(マツ無=C; マツ有=P)、20℃、25℃、30℃で8ヶ月間生育させた。土壌から分離された線虫は実体顕微鏡下で計数後、光学顕微鏡観察により属レベルに類別し、5つの機能群(細菌食、真菌食、植食、肉食、雑食)に分けた。各処理間の線虫群集は非類似度多次元尺度法(NMDS)により座標付けをおこなった。クロマツ実生の根系を実体顕微鏡で観察し、黒色菌根、白色菌根、茶色菌根と非菌根に分けた。その結果、S区からは線虫と菌根は検出されなかった。S区とN区に関係なく、クロマツ実生の乾物重量は温度と有意な正の相関を示した。線虫の検出属数は9±0.8(±=SE)から12±0.5とN区間で有意差はなかった。線虫頭数は、クロマツの有無に関係なく温度と正の相関を示した。N区の線虫機能群組成は細菌食性が最優占した。真菌食性線虫の割合は温度の上昇に加えて、NP区で有意に高くなった。肉食性線虫の割合は20℃のNC区とNP区で有意に高くなった。NMDSにより線虫群集は異なる温度ごとで有意にまとまった。菌根の色別割合は30℃のNP区で黒色菌根が,25℃のNP区で白色菌根が有意に増加した。以上より、砂質土壌において線虫の豊富さ、機能群組成や群集構造、さらに関わる菌根菌の分類群は温度によって影響されることが示された。


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