| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-092  (Poster presentation)

仙台湾東谷地干潟における魚類・エビ類群集の季節変動と堤防工事の影響

*村上純一(東北大・理), 柚原剛(東北大院・生命), 占部城太郎(東北大院・生命)

 仙台湾名取川河口にある東谷地干潟は,東日本大震災の津波による堤防の崩落,および地盤低下により出現した約10haの新規干潟である。干潟内には複数の澪筋が通り,破堤部5カ所で貞山運河を経由して外海に接続している。現在,崩落した堤防の復旧工事が進行中で,破堤部の埋め戻しにより海洋生物の往来が制限される懸念がある。そこで,本研究では貞山運河と行き来している魚類や甲殻類を把握するとともに、堤防工事による破堤部埋め戻しの遊泳生物への影響を調べる調査を行なった。
 調査は、東谷地干潟の澪筋内4カ所に定置網を設置し,2017年5~10月まで,月1回の頻度で実施した。いずれの調査でも、定置網は干潮時に設置し,約24時間後に捕獲物を回収した。7月以降は上記作業を2日続けて行い,1地点につき2回の採集を行なった。
 調査の結果,魚類15種1107個体,エビ類7種960個体,カニ類8種466個体,全体で33種2544個体が採集された。種組成や出現個体数は季節変動が卓越する一方で地点によっても異なり,調査地点ごとの種組成の違いには部分的に入れ子構造のあることが分かった。また,破堤部からの距離を考慮したモデル解析から,一部の魚種では出現率が特定の破堤部の存在や距離に依存していることが示唆された。
 以上の結果から,東谷地の魚類や甲殻類群集に及ぼす堤防工事の影響や保全策について議論する。


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