| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-094  (Poster presentation)

窓辺の遺骸から推測される節足動物群集と屋外環境

*木野寛, 小池文人(横浜国立大学)

 近年,都市の緑が生物多様性の保全,生態系サービスなどの観点から重視されている.他方で,都市において緑地の増加が節足動物量を増加させ,これを迷惑昆虫ととらえる住民も存在する.生物多様性の保全,生態系サービスなどの利益と不快性とのバランスをとるには飛来昆虫の状況把握とそれにもとづいた対応が必要である.しかし,ペストコントロールの一環として工場内への飛来侵入の原因や周辺環境の影響についての先行研究(篠田 1992、奥谷 1999 など)は多く行われているが、居住を目的とした通常の建物において日常的に窓の開閉を行う屋内への飛来侵入に関する研究は少ない.本研究では問題を単純にするため,内部発生がなく,飛来昆虫の誘因である夜間照明や臭いなどの影響も少ない学校建築を調査対象とし、周辺の緑被率や湿性環境の存在(泥や礫,湿地植生などの底質をもつ河川や調整池)が異なる数校の学校において,気流による受動的な飛来侵入や能動的な誤侵入で形成された昆虫群集(assemblage)を調査することで飛来侵入と屋外環境の関係を調査した。昆虫群集は清掃が行われにくく,飛来侵入遺体の蓄積が見込める屋内窓辺の桟と縁の遺体を採集した。その結果、飛来侵入遺体はほとんどが昆虫であり,昆虫の飛来侵入は主にハエ目により起こっていた.飛来侵入昆虫の遺体群集の組成は300m内の緑被率が高いとハエ目が優占し、より水場との距離が離れるとカメムシ目が多いことが分かった。


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