生息地の断片化は生物の多様性パターンに大きな影響を与えうるが、その効果は極めて種特異的である。そのような断片化に対する反応の種間差を生み出す形質として生息場所や餌資源利用の特殊化は特に重要だと考えられる。断片化の結果として生じたパッチ状の生息地では、スペシャリスト種はより生息環境や資源を失いやすいだろう。さらに、特殊化した種は生息場所や資源密度の薄い領域を分散する能力が低く、生息地の隔離により影響されやすいと予測される。しかしながら集団遺伝構造と生息地断片化の関係を調べた多くの研究は単一種のみ、あるいはいくつもの形質の大きく異なる遠縁な種を対象としたものが多い。そこで本研究ではごく近縁で同所的に生息しながら寄主利用幅（利用するキノコの種数）の異なる菌食性ツツキノコムシ科甲虫複数種を対象として研究を行った。市街地や耕作地などにより分断化された京都市近郊の森林を調査地としサンプリングを行った。マイクロサイテライト遺伝子座を用いて調査での空間遺伝構造を明らかにし、生息地である森林と生息に不適な市街地・耕作地での移動抵抗性を推定した。また生息地の連結性と遺伝的多様性の関係を解析した。本発表では、寄主利用の特殊化の程度が異なる種間での比較結果を紹介する。