| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-103  (Poster presentation)

沖縄島のアリ類における多種共存メカニズム仮説の検証

*野中春日(琉球大学), 下地博之(関西学院大学), 木下哲(琉球大学), 辻和希(琉球大学)

 生物の多種共存メカニズムの解明は群集生態学における重要課題であり、アリ群集は多種共存の実例のひとつとされる。一般に形質間のトレードオフはニッチが類似する種の共存を促す要因とされており、アリでは干渉的競争能力と消費的競争能力(餌発見能力)間のトレードオフ、干渉的競争能力と温度耐性間のトレードオフなどが多種共存のメカニズムであると考えられてきた。しかし、これらの先行研究では干渉的競争能力として用いられた指標が異なっていた場合があること、同一の群集内でそれぞれの指標を網羅的に調べていないことから、トレードオフの有無を結論づけるには更なる研究が必要である。そこで本研究では沖縄本島内のアリ群集を対象に、野外実験と室内実験によって競争能力形質を定量化することでトレードオフの実態に迫ることを目的とした。
 野外実験では、設置したスクロース溶液に誘引されたアリ種と個体数を観察し、餌発見能力と餌占有能力を調べた。室内実験では、沖縄島の在来・優占種であるオオズアリ、クロヒメアリ、アミメアリ、ヤンバルアメイロアリを用いた。一定条件下で餌を発見するまでの時間(餌発見能力)、餌場における2種のワーカー個体数の変動(餌占有能力)と攻撃行動(攻撃性)の観察を行った。また、高温環境下における生存率(高温耐性)を含めた4つの指標を定量化し、それぞれの相関関係を調べた。
 餌発見能力はヤンバルアメイロアリが最も高く、餌占有能力はアミメアリとオオズアリが高かった。攻撃性はアミメアリが最も高く、高温耐性はクロヒメアリが最も高かった。これらの結果から形質間のトレードオフと多種共存メカニズムについて議論する。


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