| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-111 (Poster presentation)
神奈川県を中心に関東地方に移入した外来種アカボシゴマダラHestina assimilis assimilisは近年その分布を大きく拡大しており、在来種であるゴマダラチョウHestina persimilis japonicaと食樹(エノキ)や生活様式が酷似していることから、競合が危惧されている。2種間でどのような影響があるのか研究された事例は少なく競合関係については明らかにされていない。本研究では、越冬後の幼虫に焦点をあてて覚醒時期の違いや先住効果を検証し2種幼虫の競合の可能性や発生時期の違いを検証した。
本研究では、2種の休眠覚醒時期を明らかにするために飼育下で休眠させた幼虫をいくつかの温度条件へと移し覚醒までの日数を記録した。また覚醒後の餌資源競争について調べるために覚醒後の幼虫を用いて定位行動と先住効果を実験した。
実験の結果、15.0℃ではアカボシゴマダラはゴマダラチョウに比べて有意に早く覚醒したが、そのほかの温度条件(17.5℃、20.0℃、22.5℃)では有意差は見られなかった。温度を段階的に上昇させていった場合では、最初に覚醒した個体が見られた温度に差があったものの、群間で有意差は見られなかった。定位行動と先住効果についてはアカボシゴマダラのみによる実験ではあったが、ほとんどの場合において定位行動を示し、先住個体が侵入個体を追い払う行動が見られた。
この結果から、アカボシゴマダラはゴマダラチョウより先に休眠から覚醒し、春季の餌資源確保において有利である可能性が示唆された。