| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-119  (Poster presentation)

アカハライモリの非繁殖生態

*高橋華江, 佐藤拓哉(神戸大学)

両生類の多様な生活史を解明する上で、非繁殖期の生態は繁殖期の生態と同様に重要だが、よくわかっていない種も多い。日本産有尾類であるアカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)は、日本全国に広く分布する小水域の頂点捕食者であるにもかかわらず、その生態はほとんど解明されていない。そこで本研究では、5月~11月にかけて京都大学フィールド科学研究センター芦生研究林の小水域において、アカハライモリの密度、性比、食性、栄養状態(肥満度・脂肪体・個体全体の脂肪の質量)について調べた。個体全体の脂肪の質量を計測する際、生体インピーダンス法の利用を試みた。
その結果、食性については水棲の昆虫だけでなく、陸棲の小型動物も重要な餌資源であること、季節によって食性と採餌量を大きく変えることがわかった。脂肪体の重さの季節パターンはこれまで報告されてきた有尾類のパターンと似通っており、冬眠・産卵前の秋に最大値を示し、春に最小値を示した。生体インピーダンス法は化学分析による脂肪量との相関が不明瞭で、アカハライモリでの応用には改善が必要であることがわかった。
また、夏季には雌雄ともに水域の密度が減少し、一部の個体が陸域に移動していることが示唆された(partial migration)。小水域付近の陸域を調査した結果、倒木の下などで過ごしていることがわかった。以上のような野外における生態は自然史的に重要であるだけでなく、非繁殖期における陸域―水域の使い分けという生活史形質の変異が集団内で維持される機構を考える上でも有用なデータである。


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