| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-122  (Poster presentation)

PITタグを用いたトウキョウダルマガエルの移動分散の解明

*野田康太朗(宇都宮大学大学院), 中島直久(東京農工大学大学院), 守山拓弥(宇都宮大学大学院), 森晃(生物多様性センター), 渡部恵司(農研機構), 田村孝浩(宇都宮大学大学院)

かつては身近な動物であったカエル類は、近年では減少傾向にあるとして各地のレッドデータブックに記載されるようになり、その保全は喫緊の課題である。保全に寄与するためには基礎的な生活史のデータの集積が必須である。越冬期に土中に潜伏するカエル類については、調査が難しいことから生活史の知見が不足している。そのため、越冬場所を効率的に調査できる手法が求められる。標識再捕獲に有用なPITタグは土中内も非接触で探知ができる他、電池が不要なため長期の調査が可能という利点がある。本研究では関東地区の水田水域に生息するトウキョウダルマガエル(Pelophylax porosus porosus)を対象とした。本種においては、越冬場所を詳細に調べた研究が無いことに加え、繁殖期に関する研究も限られている。そこで、PITタグを用いて繁殖期から越冬期を通じた生活史を解明することを研究目的とした。対象地は栃木県内の圃場とした。PITタグの挿入および追跡調査は2016年6月~2017年7月にかけて1週間に1回の頻度で夜間に行った。越冬場所の探索は2016年11月から2017年3月にかけて行った。地表からPITタグを探知する専用のリーダーを用いて、対象地内を網羅的に歩き探知した。成体は、繁殖期において湛水深が深い水田に分布が集中する傾向が見られた。また、雌雄別では、オスに比べメスは水田周辺の水路の法面や畦畔等に広がって分布する傾向が見られた。2016年に標識した157個体のうち30個体の越冬を確認した。30個体のうち28個体は水田に隣接した畑地に移動して越冬していた。また、冬期湛水を実施した水田では生存個体を確認できず、脱落したPITタグのみを確認した。冬期湛水の実施が本種の越冬に対して負の影響を与えている可能性が考えられた。個体の多くは地表から15cm以深の土中にて確認された。深い場所で越冬することで、耕起などの農作業による撹乱の影響が小さく、生存できたことが示唆された。


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