| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-123 (Poster presentation)
北半球の哺乳類や鳥類は一般に春から秋に繁殖しており、子の発育・成長は春から夏に早く、秋に遅くなる。この傾向は、光条件を手掛かりに春や秋を予測しているため、繁殖機会や餌の質・量に季節差があるためなどの仮説で説明されてきた。しかし、どのような環境要因がどの成長段階で影響しているのかはよくわかっていない。本研究では、一般的な集団と真逆で、秋から春にかけて繁殖する宮崎市のアカネズミで、子の成長にどのような季節差が生まれるかを観察した。
南側窓からの採光による自然光周期、22.6±0.8℃の環境温度、不断給餌・給水条件の飼育下で、春と秋に捕獲した妊娠メスと飼育下で交配させたメスから生まれた子の体重増加パターンを出生季節間で比較した。
秋生まれと春生まれの比較では、50日齢まで成長速度に差がなく、春生まれ個体の初期成長が速いわけではなかった。その後は、雌雄でパターンが異なり、オスは60日齢までの回帰以降で春生まれの成長が速かった。一方、メスでは成長に季節差は見られなかった。オスの季節差は至近的には採餌量の差に起因するかもしれないが、本種は性的二型があるため、60~100日齢で非繁殖期となる春生まれのオスは次の繁殖期で競争に勝つため体を大きくし、60~100日齢に繁殖期である秋生まれのオスは早く性成熟して繁殖しようとした可能性がある。実際に雌雄ともに秋生まれが早く繁殖状態を示した。これは春に繁殖を開始する集団と逆のパターンで、秋に繁殖を開始する宮崎集団の特色だと思われる。夏生まれも含めた3季節集団の比較では、50日齢以降、雌雄ともに夏生まれの成長が遅かった。長日かつ餌条件が十分でも、非繁殖期に生まれると成長が悪くなると考えられる。
本研究により、光条件に応じて成長速度が変わるという説は再考の余地があり、また、雌雄差に注目しながら成長解析を進める必要があることが示唆された。