| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-125  (Poster presentation)

つがい外父性の存在は育雛行動に影響を及ぼすか –ヤマガラとヒガラの比較–

*南美月, 肘井直樹(名大生命農・森林保護)

鳥類の多くの種の配偶システムは長らく一夫一妻制であると思われてきたが、近年のDNA解析技術の発達により、約90%の種でつがい外交雑が起こっており、厳密な一夫一妻制の種・つがいはまれであるということがわかってきた。つがい外父性(EPP; extra-pair paternity)の存在は雄の育雛行動に負の影響を及ぼすと考えられる。本研究では、育雛行動のひとつとして給餌行動に着目し、各つがいにおけるEPPの程度との関係を調べることで、カラ類の雌雄それぞれの繁殖戦略を解明することを目的とした。
愛知県豊田市にある名古屋大学演習林に巣箱を設置し、そこで繁殖を行ったヤマガラ、ヒガラを対象に研究を行った。育雛中期(雛5~7日齢時)と育雛後期(雛11~14日齢時)の2回のタイミングで、ビデオカメラによる給餌行動の観察を行った。加えて、各つがいの親と雛の血液から親子判定を行い、給餌行動との関係を調べた。
ヤマガラとヒガラの各つがいにおける親子判定の結果、両種ともすべてのつがいにおいてつがい外父性の雛(EPY; extra-pair young)を1羽以上含んでいた。血液を採取することができた雛のうち、EPYが占める割合は、ヤマガラで29.0%(n=31)であり、ヒガラで63.0%(n=27)であった。ヤマガラ、ヒガラの給餌頻度(1雛1時間あたりの給餌回数)は、雄よりも雌で高かった。各つがいのEPYの割合と雌雄の給餌行動の関係を調べたところ、雌の給餌頻度はEPYの割合によらなかった。一方、雄の給餌頻度は、EPYの割合と正の相関があり、巣内のEPY率が高くなるほど給餌頻度が高くなっていた。EPPの存在が雄の育雛行動に負の影響を及ぼす可能性があるという予想に対し、逆の結果が得られた。この理由として、つがい雌につがい外の雄が近づくのを防ぐmate guardingと給餌行動が、トレードオフの関係にあることが考えられた。


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