| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-165 (Poster presentation)
多くの動物には、自分自身にとっての、捕食者、被食者の両方が存在する。そのような動物は、発見した相手が捕食者、もしくは被食者のどちらなのかを判断し、攻撃したり、逃避したりと、相手によって起こすべき行動を変えていることが分かっている。
捕食者、および被食者を発見するための手段として赤外線を用いる動物が、いくつか知られている。しかし、赤外線を探知できる動物が、野外において、どのように捕食者、被食者を識別しているかを検証した研究は少ない。
本研究では大型、中型哺乳類が捕食者であり、小型哺乳類が被食者であるニホンマムシを用いた。マムシが捕食者、被食者を識別するための手段として、ピット器官による赤外線の探知が挙げられ、この赤外線探知によって、相手の大きさを把握できることが知られている。しかし、捕食者、被食者の識別に大きさを用いているという点に着目し、野外において研究した例は知られていない。そこで、本研究では、「マムシはピット器官による赤外線探知によって、相手の大きさを把握し、大きな熱源(捕食者)、小さな熱源(被食者)それぞれに対する行動を変化させる」という仮説の検証を目的として、野外実験を行った。
ピット器官を塞いだマムシと何も施していないマムシに、大きな熱源と、小さな熱源を近づけた際のマムシの行動を、野外においてビデオカメラで動画撮影し、解析した。その結果、マムシのいくつかの行動(壁を上る、咬み付くなど)の継続時間または回数において、ピット器官を塞ぐ、もしくは塞がない処理の間で、接近させる2種類の熱源による差に、有意差が確認された。したがって、マムシが赤外線探知によって、大きさの違う熱源を識別し、それぞれに対する行動を変えていることが示唆された。