| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-167 (Poster presentation)
日本国内に生息するドジョウには,中部地方以東の限られた地域から不連続的に検出されるType I系統と,日本列島全域から検出されるType II系統の大きく分化した2つのmtDNA系統がみられる.著者らは2つのmtDNA系統が同所的に検出された福井県敦賀市の中池見湿地において,両者は生殖的に隔離され,それぞれが両性生殖している別種であることを明らかにした (Okada et al. 2017).これら同所的に生息するドジョウ2種(Type I種とType II種)が共存するための生態学的な機構を検証するために中池見湿地で実施した採集調査では,Type I種は湿地内北部の水路に,Type II種は湿地内南部の水田内に多く生息している傾向が示された (Okada and Kitagawa 2018).しかし,調査地は3地点のみと限られており,より多地点での網羅的な調査が必要であるが,直接的な採集による検証では物理的な限界と生息地への負荷が考えられた.
本研究では,生物が水中に放出した環境DNA(eDNA)の検出に基づき,ドジョウ2種の各地点・時期における在・不在を推定するとともに,棲み分けや時期による移動について検証した.2017年の4-10月の間に月1度の頻度で中池見湿地内に点在する水路,水田,池など多様な環境を網羅した12地点で採水を行った.採水した試料をフィルターで濾過後,eDNAを抽出した.中池見湿地に生息するドジョウ2種それぞれを種特異的に検出するプライマーセットを開発し,リアルタイムPCRを用いて各種の検出を行った.その後,地点間で各種の陽性反応数および調査月毎の変化の様子を比較した.
eDNAの結果は先行研究を支持しており,さらに,Type I種は北部の水路を中心に局所的に,Type II種は南部の水田を中心に広域に検出されるという結果も得られた.また,一部の地点では2種ともに調査期間全体を通じて高い陽性反応が検出された.これらから,生殖的に隔離されたドジョウ2種は,同所的生息地においてもある程度混在して生息していることが示唆された.