| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-170  (Poster presentation)

魚食・鱗食・ヒレ食のシクリッド3種における口部形態の左右差の比較

*西川巧馬(龍谷大・理工), 丸山敦(龍谷大・理工), 畑啓生(愛媛大・理), Richard Zatha(Dep.Biol), Bosco Rusuwa(Univ.Malawi), 小田洋一(名古屋大・理), 竹内勇一(富山大・医)

魚類の口部形態は、摂食生態と密接に関わっており、明瞭な種内変異さえ知られている。タンガニイカ湖に生息する鱗食性シクリッド科魚類Perissodus microlepisは他の魚のウロコを効率的にはぎ取るために左右一方の下顎骨が大きく、それに伴って右か左かに向かって口がねじれて開く。一方で、この口部形態の左右性は、様々な魚種で確認され、その左右性には種ごとに強弱があることが分かってきた。魚類全体で見ると、口部形態の左右差は系統的に古いほど強く、新しいほど弱いという系統的な関係性が見出されているが、近縁種間で大きな違いも見られるため、系統関係のみでは説明しきれない。そこで本研究では、口部形態の左右性の強弱が食性と関係することを検討するため、類似した遺伝的背景ながら異なる食性をもつシクリッド科に注目した。タンガニイカ湖と同じくアフリカの古代湖の一つ、マラウィ湖に生息するヒレ食魚Genyochromis mento、魚食魚Buccochromis heterotaenia、藻類食魚Metriaclima zebraの3種を対象として、左右の下顎骨の高さの違いを厳密に計測した。その結果、マラウィ湖産シクリッド3種においても、ほぼ全ての個体で口部形態に左右差が見られた。左右性指数の頻度分布について、赤池情報量基準 によりモデル選択を行なったところ、全3魚種で二山分布が採択され、右利き・左利きの種内二型が確認された。ただし、その左右差は鱗食魚の方が他の3魚種より約3倍も大きかった。口部形態の左右差は魚類に広く見られるものの、鱗食のように顕著な左右差が適応度に直結する場合は、その左右差が大きく拡大すると考えられる。一方、他の食性の魚種では、摂食時に身体の片面を使うメリットが少ないために、相対的に左右差が小さいことが示唆された。


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