| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-176  (Poster presentation)

アリのコロニー間闘争における闘争と逃走の行動意思決定

*植松潤平(琉球大学)

 アリには一般に同種コロニー間で敵対関係が存在し、ワーカーは他コロニー個体に対し攻撃的に振る舞うことが知られる。これは非血縁者にコロニーの資源を搾取される寄生的行動から、コロニーの適応度の減少を防ぐために進化した行動であると推察されている。沖縄産トゲオオハリアリにおいても同様にコロニー間で敵対関係があり、ワーカーは同種他コロニー個体に対し常に攻撃的にふるまうことが、実験条件下における先行研究で示されている(Suwabe et al. 2007)。一方、発表者は野外において、本種のワーカーが他コロニーの個体と遭遇した際、その場から逃げるように走り去る様子を度々観察している。このことから、本種は実際の野外においては他コロニーの個体に対し常に攻撃的に振る舞ってはいないのでは、と発表者は推察した。そこで本研究では、これら行動の差異が状況に依存したものか、それとも個体差によるものかを検討するため、野外において本種の行動調査および実験を行った。
 調査および実験データの双方で、他コロニー個体に対する攻撃性の強度と巣からの距離に有意な負の相関関係が見られた。また、攻撃性と巣からの距離の関係には統計的に有意な個体差が存在することが、実験データより示された。この結果は、ワーカーは巣からの距離に依存して他コロニー個体への攻撃行動を変化させていること、さらに、攻撃性の強度には個体変異があることを示す。巣防衛機能としての攻撃性は巣から遠い場所ほど必要性が下がるので、巣から離れるに伴い非攻撃的になることは、費用対効果の観点から適応的であると考えられる。実験系としての本種のメリットにコロニーサイズが厳密に計測できることがあげられるが、コロニーサイズと攻撃行動の関係も検討したい。


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