| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-179 (Poster presentation)
グッピー(Poecilia reticulata)の雄は色素色と構造色という発色メカニズムが異なる2種類の色斑を持ち,その派手な色斑はメスへの求愛シグナルとして使用される.水圏における視覚シグナルの伝わりやすさは水中の光環境の状態によって変化する.沖縄島のグッピーは1970年代以降に侵入したが,雄は侵入先の新しい水中光環境においてより伝わりやすい色斑を発達させる適応をしていることが予想される.そこで,本研究では水中の色斑シグナルの伝わりやすさに影響する要因として水中の濁度および水面上空の開放度に注目し,濁った水環境ほど,また,光が遮られた暗い水環境ほど,メタリックな輝きを持つ構造色が発達するという仮説を立てた.仮説を検証するため,沖縄島17地点の河川・池に生息するグッピー集団における雄について,5種類の色斑面積(構造色としてシルバー・青緑構造色,色素色として橙色・黒色・黄色)と2種類の色斑の色相(青緑構造色および橙色)を調査し,色斑面積と色相の地域分化および色斑面積と光環境の関係性について検討した.
解析の結果,雄の青緑構造色および黒色,黄色は集団間で有意に面積が異なった.また,雄の色斑の色相については,青緑構造色および橙色が集団間で有意に異なった.当初の予測通り,青緑構造色が占める面積は生息地の水の濁度が高いほど大きくなったが生息地の上空の開放度との直線的な相関関係は弱かった.また橙色,黒色および黄色面積は開放度が高いほど小さくなる傾向が見られた.GAMMの結果,青緑構造色と黄色の面積は濁度と開放度の両方と有意な関係性があることがわかった.一方,橙色は開放度のみと有意な関係性が見出だされた.以上の結果は,侵略的外来生物であるグッピーの雄の色斑が侵入先の環境圧から受ける自然選択によって数十年という短いスケールで急速に地域分化した可能性を示唆する.