| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-180  (Poster presentation)

体温モニタリングによるアカネズミの繁殖、日内休眠、活動時間の推定

*畔柳聴(宮大院・動物環境管理), 児玉芳宣(宮大院・動物環境管理), 大久保慶信(自然研), 江藤毅(新潟大・朱鷺自然セ), 森田哲夫(宮大・フ・生物資源), 家入誠二(宮大農・動物環境管理), 坂本信介(宮大農・動物環境管理)

 小型哺乳類の多くは夜行性であり,特に地下巣を利用する種では野生下で個体の活動を追跡するのが難しい.このような場合にはデータロガーが有効であるが,ノネズミ類は体サイズが小さいため,適用例が限られている.本研究では,アカネズミの腹腔内に温度データロガーをインプラントし,体温変動から繁殖,日内休眠,活動時間を推定した.妊娠~授乳期の体温変動の特徴を捉えるために,インプラントしたメスを飼育下で交配させ,体温を計測した.また,インプラント個体を再捕獲することで野生下での体温変動を計測した.
 飼育下では,妊娠前期に日最低体温の上昇,妊娠後期に日最高体温の下降,出産後に日最高体温の急激な上昇が観察された.さらに出産後数日間は,日最高体温と日最低体温が高いまま維持され,その後非妊娠時の体温に戻るという特徴的な変動が観察された.これらの特徴から野生下のアカネズミの繁殖の有無を判定した.野生下で体温を計測できたメス20頭中10頭で,出産前後に特有の体温変動を観察できた.体温変動と捕獲後の出産の観察により,宮崎市の繁殖期は主に10月~4月で,非繁殖期は5月~9月であると示唆された.また、1頭で最大4回の出産が確認された.メスでは非繁殖期よりも繁殖期に日最低体温は高く,日最高体温は低かった.これは妊娠~授乳期を除いて解析しても同じ結果となった.繁殖期の性ホルモンレベルの上昇に伴い日最低体温が上昇したと考えられる.体温を計測できた16頭のオスでは,日最高体温が非繁殖期よりも繁殖期に高く,これはメスの探索など活動性が高いためだと考えられる.冬にメス1頭で日内休眠が観察され、オスでは観察されなかった.日平均体温以上を記録した時間を活動時間と仮定すると,雌雄ともに繁殖期に活動時間が長くなったが,これは夜の長さの変化と合わせて慎重に検討する必要がある.


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