| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-181  (Poster presentation)

オサムシ類2種と陸棲巻貝の捕食被食行動

*榎本尊(北大・水産), 山田寛之(北大・水産), 和田哲(北大・院・水産)

 捕食者は捕食成功度を上げるために、被食者は被食リスクを下げるために、適応的な形態や行動などを進化させてきた。特に貝食性のオサムシ類では頭部形態(巨頭型と狭頭型)に伴う捕食行動の差異が知られ、陸棲巻貝では捕食者に対する多様な防衛戦略が知られている。
本研究では北海道に分布するオオルリオサムシとマイマイカブリを用いて、形態差に伴う捕食成功度と捕食行動の差異を種差、性差、個体差に着目して検証した。また4種のカタツムリを用いて防衛戦略の有無を検証した。
頭部形態のより伸長したマイマイカブリでは全てのカタツムリに対してオオルリオサムシよりも捕食成功度が高かったが、捕食行動においては顕著な種差は見られなかった。個体差としては頭幅の広い個体ほど破壊捕食し、頭部の長い個体、頭幅の短い個体ほど捕食成功度が高かった。また両種ともに頭幅に関連した性差が見られた。種間での巨頭型、狭頭型の差異は見られなかったが、形態に応じた捕食行動と成功度の差が観察され、カタツムリに応じて有効な形態が異なっていた。
被食度の最も低かったヒメマイマイでは白色のエピフラムを形成していた。ヒメマイマイに対してオサムシの有無がエピフラム形成への影響を実験的に検証したところ、オサムシのいる場合には厚い白色のエピフラムを、いない場合には薄い透明のエピフラムを形成する割合が高く、捕食者の有無でエピフラムの張り分けをしている事が分かった。白膜形成個体の中で被食個体は一個体のみであり、オサムシに対する有効な防衛戦略だと考えられる。従来、エピフラムの機能は乾燥防止のみに焦点が当てられてきたが、本研究の結果は、夏季の捕食者への防衛戦略として使われていることも示唆している。


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