| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-187 (Poster presentation)
マルミジンコ科など底生性のミジンコ類は、植物間隙や底泥上などに生息しており、捕食性の水生昆虫や魚類にとって重要な餌資源と考えられている。マルミジンコ科の被食回避行動の一つに擬死行動が観察されており、種や体サイズによって擬死行動の時間が異なることが観察されたが、それがどの程度被食回避に貢献しているのかはよくわかっていない。
そこで本研究では、底生ミジンコ類の捕食者に対する擬死行動の効果を明らかにするため、トンボ幼虫(ヤゴ)に対する底生ミジンコ類の被食率を異なる体サイズと密度で観察した。擬死行動をおこなうミジンコが多ければ、その間ヤゴの気がそれるため、長く擬死しているミジンコはその場をやりすごすことができるだろう。そこで、被食者が低密度時よりも高密度の場合にヤゴの気がそれるため、ミジンコの被食率は減少すると仮説をたてた。
実験には、被食者として研究室で継代培養しているマルミジンコChydorus sphaericus、エダツメタマゴミジンコOxyurella tenuicaudisを、捕食者にアキアカネSympetrum frequensを用いた。実験は、ミジンコ種ごとに、また体サイズごとに分けて行った。いずれの場合も、径35 mmのシャーレにミジンコ5 個体(低密度区)または25 個体(高密度区)を入れた後、2 齢幼虫のヤゴを1 個体入れて実験を開始した。 実験にあたっては、ビデオカメラで30 分間観察し、その間ヤゴから攻撃を受けた際におこなわれたミジンコの擬死行動の有無、擬死行動の時間、被食個体数を記録した。ビデオ観察の後に、24 時間後の生残個体数を算出した。
実験の結果、エダツメタマゴミジンコは低密度の場合よりも高密度の場合に生残率は有意に高かった。他のミジンコではそのような傾向はみられなかった。また、ミジンコ体サイズ間では被食率に有意な差は見られなかった。これら結果をもとに、ミジンコ各種の擬死行動による逃避成功率やその違いが生じる原因について考察をおこなう。