| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-188  (Poster presentation)

営巣密度によるチドリ目の擬傷行動の進化

*西條未来, 沓掛展之, 大槻久(総研大・先導研)

チドリ目の多くの種は地上営巣を行う。そのため、チドリ目の卵や雛は高い捕食圧に晒されている。地上営巣を行うチドリの中には、子を守るために擬傷行動とよばれる行動をとる種がいる。擬傷行動は、親鳥が怪我をした振りをして、捕食者の注意を引き付ける対捕食者行動である。発表者は近年、コロニーで営巣する種では擬傷行動が進化しにくいことを系統種間比較明らかにした。本研究では、被捕食者である鳥の巣の数nにより、進化的に安定な擬傷率がどのように変わるかを、数理モデルを用いて調べた。
〈モデル〉親鳥は自らの卵や雛を守るため捕食者に対し擬傷行動をとることが出来るとし、その頻度(擬傷率)をxとおく。学習していない捕食者が擬傷行動を見ると、注意が逸らされ巣の探索効率が落ちる。ただし捕食者が巣の発見に成功し卵や雛を得ると擬傷行動を学習する。学習済みの捕食者に親鳥が擬傷をすると逆に巣を目立たせてしまい、卵や雛が捕食されやすくなるとした。以上の仮定のもとで擬傷率xのESS(進化的に安定な戦略)を求めた。
〈結果〉巣の数nが大きくなるとESSにおける擬傷率は低下した。これは、nが大きいと捕食者が擬傷をする親鳥に会う頻度が増加し、学習済みの捕食者が増加するため、擬傷をすることの利益が小さくなるからである。また、巣の密度が高ければ擬傷行動に関わらず巣の場所が捕食者から見つかりやすくなるため、この効果も擬傷行動の利益を小さくした。これらの結果から、擬傷行動はコロニー性の種よりも単独で巣を作る種で進化しやすいことが分かった。


日本生態学会