| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-067 (Poster presentation)
都市域における送粉者は、花粉媒介による調整サービスのほか、蜂蜜生産による供給サービス、環境教育による文化的サービスを含む生態系サービス向上に重要な役割を担う。屋上緑化における蜜源植物の導入は、こうした働きを支える有効な手段の一つである。一方で、建築物の荷重制限に合わせた粗放型屋上緑化では、最低限の潅水量のもと、薄層土壌上で緑化を施す必要があるため、植物体の生育状態を長期間良好に保つ栽培方法の開発が望まれている。CAM植物の混植は屋上緑化において他種の生育状態を改善するとされているが、その効果は蜜源植物の生育型によって異なりうる。本研究では、8種の蜜源植物を匍匐種(Phyla canescens、Trifolium repens、Thymus serpyllum)、匍匐直立種(Mimosa pudica、Rosmarinus officinalis ‘Prostratus’)、直立種(Calamintha nepeta、Lavandula officinalis、Rosmarinus officinalis ‘Erectus’)の3つの生育型に分け、屋上緑化に一般的に用いられるCAM植物であるSedum albumとの混植実験を行った。その結果、匍匐直立種でのみS. albumの混植による生育状態の改善がみられた。これは、生育初期に直立状に成長する匍匐直立種では、匍匐状に成長するS.albumとの間で競争による正味の負の影響が無かったためと推察された。一方で、直立種ではS.album混植時においても植被量が少なく、正の効果がみられなかった。ここから、粗放型屋上緑化の植物種選択における、混植時の空間的不均質性および植被率の高さの重要性が示された。また、S. albumの混植は蒸発散の抑制により土壌水分量を上昇させることで、他種の生育状態を改善させることが示唆された。