| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-068  (Poster presentation)

冷温帯ブナ林における細根動態の経年変動:マステイングにともなう細根生産への資源分配機構

*仲畑了(京都大学農学研究科), 大澤晃(京都大学農学研究科, 京都大学地球環境学堂), 楢本正明(静岡大学農学研究科), 佐藤雅子(静岡大学農学研究科), 水永博己(静岡大学農学研究科)

ブナ樹木には、種子生産が空間的に同調しながら大きく年変動するマスティングの現象が顕著に表れる。これに関連して、ブナ林生態系の純一次生産や炭素分配機構は大きく年変動する可能性がある。一方、樹木の細根は養分・水分の吸収のみならず、森林地下部への炭素供給源として大きな役割を担っている。森林のより長期的な生態系生産動態を把握するうえで細根動態の経年観測は必要不可欠であるが、マスティングをともなう森林においては、その現象が炭素分配機構に及ぼす影響を評価する必要がある。本研究では、種子形成にともなう養分確保のために細根生産は増加する、という仮説のもと、ブナ林における数年間の細根観察データを用いて、種子生産と細根生産との相関関係を明らかにすることを目的とした。新潟県の苗場山系に位置する、標高の異なるブナ林2林分を対象に、リタートラップ法とミニライゾトロン法を用いて地上部リター生産と地下部細根動態を測定した。2008年から2016年にかけてリタートラップを各林分10個設置し各年の葉・種子生産量を推定した。2008年8月に各林分4本のミニライゾトロンチューブを埋設し、2009年から2016年の積雪期を除いた期間に、約1か月間隔で土壌断面を撮影した。細根画像データを画像解析し、面積ベースの細根生産量を求めた。対象とするブナ林では、2008年から2016年にかけて隔年でマスティングが観測された。細根生産量は明瞭な季節変動を示したが、その変動パターンは年ごとに異なっていた。年間の種子生産量と細根生産量との間に相関関係はなかった。しかし、各年の種子生産量とその前年秋の細根生産量の間に正の相関が示された。この結果は、マスティングで種子を多く形成する前年に養分確保のため細根生産が活発になる可能性を示唆しており、本研究の仮説を支持する。


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