| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-070 (Poster presentation)
農学的には、火山灰土壌はリン欠乏になりやすい土壌であると言われている。それは、火山灰土壌中に豊富に存在するアルミニウムや鉄がリンを強く引き寄せるため、植物が吸収利用可能なリンが少ないためである。しかし、火山灰土壌に成立する日光の雑木林などではリン欠乏の症状は観察されない。そこで、火山灰土壌における自然の植生でリンが植物の成長を制限しているのかを調べることにした。
(1)赤城山の噴火によって形成された鹿沼土と、そこに4%の有機物(ハンノキ属の葉)を入れた土(有機鹿沼土とする)で植物の成長に変化が出るのか、約2か月生育後の個体に対して乾燥重量測定を行った。窒素固定を行うヤマハンノキは有機鹿沼土で成長速度が大きかった。一方、非窒素固定植物のダケカンバの場合、成長に顕著な差はみられなかった。また、鹿沼土にリン酸を添加した場合、ヤマハンノキは成長が良くなったが、ダケカンバでは改善されなかった。このことは、有機物の分解によって生成するリン酸が火山灰土壌におけるリン欠乏を緩和し、窒素固定植物の成長を改善している可能性を示唆している。
(2)イタドリを用い、黒ボク土と鹿沼土で植物の成長に違いが出るのか、約1か月生育後の個体に対して同様の測定を行ったが、2つの土壌において成長に差が見られなかった。黒ボク土が有機物に富んでいるにもかかわらず植物の成長が改善しないのは、黒ボク土は数万年をかけて形成されたものであり、そこに含まれる有機物は難分解性のものだけが残っているためである可能性が高い。植物は比較的新しい有機物の分解によって生成する無機窒素やリン酸を利用して成長しているのかもしれない。
一次遷移の初期に侵入するのは非窒素固定植物のイタドリである。降水中に含まれる窒素を利用していることは知られているが、今後、イタドリが有機物を全く含まない土壌でどのようにリン酸を利用しているのか解明したい。