| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-075  (Poster presentation)

オオミスミソウの越冬葉の生態的意義

*武藤公樹(新潟大・自然研), 崎尾均(新潟大・農)

常緑植物は年間を通して光合成が可能であるほか、越冬した葉が物質の貯蔵器官としての働きを持つことが知られており、弱光や貧栄養条件下での生育に有利とされている。しかし、同じ常緑でも個葉の寿命や葉の着脱時期は種によって異なり、これらの働きの重要性は種特性や生育環境によって変化すると考えられる。本研究では、常緑草本オオミスミソウを対象に、越冬葉が雪解け直後の繁殖・栄養成長に対しどのように寄与しているかを検証した。新潟県佐渡島の自生地2カ所(落葉サイト、常緑サイト)において開花個体を無作為に選抜し、無処理区、越冬葉の光合成を遮断する被陰区、葉を全て切除する摘葉区の3処理区に配分し、積雪直前に各処理を行った。翌春に繁殖(花数、花サイズ、種子重量)、栄養成長(新葉の葉面積、LMA、窒素量)、地下部(根茎密度、窒素含有率)の各項目を測定し、処理間で比較した。サイト間でも無処理区の結果を比較した。

開花率、花数には処理実験の影響は見られなかった。花サイズは両サイトとも無処理区でやや大きい傾向が見られたが有意差はなかった。種子重量は、落葉サイトでは処理間でほぼ一定だったが、常緑サイトでは無処理区に比べ他処理区で有意に小さくなった。新葉の葉面積、単位葉面積あたり窒素量には両サイトとも処理による影響はなかったが、LMAは被陰、摘葉の順で無処理区より小さくなり、特に常緑サイトで顕著だった。また、落葉サイトに比べ常緑サイトで葉面積、種子重量などが小型化していた。以上の結果から、本種の越冬葉は種子成熟および新葉成長に対し、光合成と貯蔵物質の両面である程度寄与していることが示唆され、光資源が制限される常緑サイトでは越冬葉の働きがより重要になると考えられた。


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