| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-076 (Poster presentation)
タカノツメはZnとCdの集積樹木であり、土壌重金属濃度が高い環境下で葉にZnを約400 µg/g、Cdを40~100 µg/g程度、土壌重金属濃度が環境基準値以下の環境でZnを葉に約400 µg/g、Cdを約3 µg/g集積する。タカノツメの金属集積特性意義について不明だが、植物の重金属集積に内生菌が関与している可能性が示唆されている。土壌重金属濃度が高い多田銀山(多田)と土壌重金属濃度が環境基準値以下である名古屋大学二次林(名大)のタカノツメを採取し、葉内生糸状菌の菌相を調査した。その結果、両地域に数種の菌が共通して見られた。また、病斑部では健全部よりも重金属濃度が低く、健全な葉と病斑部で菌相に違いが見られた。これらのことから、タカノツメの重金属集積と内生菌相、病徴の発現について何らかの関係があると考えられた。Zn、Cd添加培地でタカノツメ葉内内生菌を共培養し、その成長を観察し、タカノツメ葉内内生菌間の相互作用とZn、Cdが内生菌や菌間の相互作用に及ぼす影響について調査した。共培養した菌株は多田と名大の健全な葉から分離され、両地域で優占していた菌であるColletotrichum gloeosporioidesと病斑部から高頻度に分離されたColletotrichum acutatum、Alternaria alternateを用いた。共培養の結果、病斑部から高頻度に単離されたA. alternateは低濃度のZn条件下では増殖しやすく、他の菌の成長を抑制する可能性が示された。高濃度のZn条件下ではA. alternateは成長が抑制され、物質生産能をもつC. gloeosporioidesの増殖が見られた。このことから、高濃度のZnが病徴引き起こす菌の繁殖を抑制していると考えられ、タカノツメは病原菌の病徴発現の抑制や健全な菌相の維持ためにZnを高濃度に集積している可能性が示唆された。