| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-079  (Poster presentation)

針広混交林における樹冠構造の複雑性と森林生産性の関係

*吉田雅理, 長谷川尚史, 北山兼弘, 小野田雄介(京都大学)

種多様性が高い植物群集では生産性が高くなることが言われている。複数の種が混交することで生産性が向上する効果は、1) 資源利用特性の異なる種が共存することによって、資源の相補的な利用が進むという相補性効果と、2) 多様性が高いほど、生産性が高い種が含まれる可能性が高いという選択効果の2つから説明される。しかし、種多様性効果の研究は草原での事例が多く、森林での研究は少ない。そこで、本研究では、針葉樹と広葉樹の混交度に応じて森林生産性が向上することを検証し、そのメカニズムを明らかにすることを目的とした。先行研究では、樹冠の形状や大きさは、樹木の資源獲得量と相関することが言われている。よって、メカニズムの解析については、針葉樹と広葉樹の異なる樹冠特性と資源獲得量との関係に着目した。解析には、環境省モニタリングサイト1000の森林調査区のなかで、針広混交林である8つのサイトの毎木データを用いた。樹木個体の位置座標に基づき、一定面積の円のなかでの針葉樹と広葉樹の混交度と、林分の成長量を算出した。その結果、林分の成長量が、針葉樹の優占度に応じて直線的に増加する選択効果型のサイトと、針葉樹と広葉樹の混交度が高いときに、林分の成長量が高い相補性効果型のサイトが、それぞれ3つずつ見られた。さらに、針葉樹と広葉樹の樹冠構造の解析を行うために、1サイトにおいて、UAVを用いて林冠の連続写真を撮影し、三次元林冠モデルを作成した。解析の結果、針葉樹は広葉樹よりも、樹冠投影面積あたりの成長速度が高いことが分かった。針葉樹は、樹冠投影面積あたりの樹冠表面積が高く、効率的な受光を達成していると考えられる。よって、針葉樹は、広葉樹と比較して、同じ面積でもより効率的に光を獲得しているために、単位面積あたりの成長速度が高く、針広混交林での選択効果に寄与している可能性が示唆された。


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