| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-080 (Poster presentation)
ツクバネ(Buckleya lanceolata)は半寄生植物であり、宿主特異性が弱いため、ツクバネの分布に宿主候補木の分布が与える影響は小さい。一方、ツクバネの分布には地形が影響していることが知られている。しかしながら、同一地形においてもツクバネの分布密度には差異が存在している。本研究では、野外調査によるツクバネの分布の解析と、実験によるツクバネのアレロパシーの有無を調べ、ツクバネの分布を規定する因子を検討した。
岐阜市金華山に、水平距離で30m×30mの調査プロットを設置した。プロット内に生育するツクバネの立木位置、雌雄を記録した。ツクバネは萌芽をするため、目視によって地際で分かれているものを幹、同一箇所から生育している複数の幹を個体と判断した。ツクバネ以外の樹木は立木位置、DBH、樹高を記録した。全天写真および光量子センサーを用いてDSFおよびISFを算出し、プロット内の光環境を評価した。ツクバネのアレロパシー活性は、サンドイッチ法により評価した。
調査プロット内には307幹、110個体のツクバネが分布していた。雌雄判別ができたツクバネのうち、69幹31個体が雌、181幹56個体が雄であった。K関数による分布解析の結果、ツクバネは集中分布をしており、またツクバネはDBH5cm未満の樹木と排他的に分布していた。ツクバネは直射光環境、散乱光環境ともに明るい場所に分布していたが、空間自己相関を考慮した階層ベイズモデルを用いた解析の結果、直射光環境のみがツクバネの分布に影響を与えていた。一方、ツクバネには、実験植物の発芽や成長を強く抑制するようなアレロパシー活性は存在しなかった。
ツクバネは、地上部での光資源の競争相手となる樹木を地下部の寄生により排除し、直射光が射す明るい場所に群落形成していると考えられた。