| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-081  (Poster presentation)

奄美大島に生育する熱帯性海草北限個体群の光合成に対する光と温度の影響

*島田菜摘(鹿児島大学), Gregory N. Nishihara(長崎大学), 遠藤光(鹿児島大学), 寺田竜太(鹿児島大学)

 リュウキュウアマモCymodocea serrulataは,奄美大島を分布北限とする熱帯性海産顕花植物の一種だが,分布北限の生育環境や当個体群の生理生態学的特性は十分に把握されていない。本研究では,奄美大島に生育する本種の光合成に対する光と温度の影響を明らかにすることを目的とした。また,同様に分布するウミジグサHalodule uninervis についても実験を行った。
 材料は鹿児島県大島郡龍郷町にて採集した。光量300 µmol photons m-2 s-1(以下µmol)において,水温8~40˚Cまでの純光合成速度と呼吸速度を光学式DOメーターで測定し,総光合成速度による光合成―温度曲線を求めた。また,低水温条件と生育期間の水温条件において光量0~1000 µmolまでの純光合成速度も測定し,光合成―光曲線を求めた。さらに,水温8~40˚Cまでの17条件で30分間馴致した後に,パルス変調クロロフィル蛍光(PAM)により最大量子収率(Fv/Fm)を測定した。加えて,水温8~40˚Cまでの9条件で培養し,培養開始から0,24,48,72時間後にFv/Fmを測定した。光と温度の複合的な影響を調べるため,水温2条件,光量2条件の組み合わせ4条件において12時間の光照射中の実効量子収率(ΦPSII)の変化を記録し,さらに12時間暗順致後の回復の有無を調べた。
 両種の総光合成速度は温度の上昇に伴って徐々に増加し,36˚Cで低下した。光合成光曲線では,いずれの水温条件においても光量1000 µmolでの強光阻害は認められなかった。30分の温度馴致におけるFv/Fmは,両種ともある温度まで高い値で推移したが,高水温域にて値が緩やかに低下する傾向がみられた。一方,72時間培養後のFv/Fmは,C. serrulataが高水温で顕著に低下したのに対し,H. uninervisは温度による顕著な差はみられなかった。


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