| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-089  (Poster presentation)

南根腐病の病徴進展に伴う罹病実生の根系機能の変化

*木村芙久(日本大学), 矢崎健一(森林総合研究所), 佐橋憲生(森林総合研究所), 張春花(森林総合研究所), 才木真太朗(京都大学), 吉村謙一(山形大学), 太田祐子(日本大学), 丸山温(日本大学)

南根腐病は熱帯や亜熱帯地域で猛威を振るう樹病であり、病原体である担子菌類のPhellinus noxiusが樹木の根に侵入することで感染する。我が国では小笠原諸島で本病による固有樹種の深刻な枯死被害が生じている。本病に罹病した樹木は根の枯損、葉の萎れや変色、落葉等が起き、最終的に枯死に至る。本病による枯死の要因は、根の損傷・枯損による吸水阻害であると推測されてきたが、病徴の進行過程でどのように根系の機能が変化し生理機能が衰退していくのか、未だ検証されていない。そこで本研究では、実生に南根腐病菌を人為的に接種することで、病徴の進展に対応する実生の各生理機能の変化を明らかにすることを目的とした。
供試木として、シャリンバイとアカギ(小笠原外来種)の実生苗の根に南根腐病菌を接種したものを用いた。供試木は人工光利用型ファイトトロン内で温湿度を制御して育成した。経時的にサンプリングを行い、気孔コンダクタンス、幹の水ポテンシャル、根系の透水コンダクタンス、根の枯損率(離脱根の乾燥重量/根全体の乾燥重量)を求めた。また、主根の一部を採取して切片を作成し、FITC標識小麦胚芽レクチンによる菌糸の特異的染色で、根の組織内に侵入した菌糸の蛍光観察を行った。菌糸の組織内への進展状態から、病気の進行状態を指標化し、この指標と各特性との関連性を評価した。
両樹種とも菌糸の進展に伴い、まず気孔コンダクタンスが低下し、その後根系の透水コンダクタンスが低下した。この傾向はアカギでより顕著であった。一方、幹の水ポテンシャルはほとんど低下していなかった。シャリンバイは菌糸の進展に伴い根の枯損率が増加しやがて枯死に至ったが、アカギは根の枯損率が10%に満たない段階で大半の個体が枯死した。以上の結果から、南根腐病による樹木の衰退の要因は、従来推測されていた根の枯損等による根系機能の衰退に加え、それらに先立つ気孔の機能不全である可能性が示された。


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