| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-092  (Poster presentation)

京都市内において交通量の違いが街路樹の光合成機能に与える影響

*松本真由, 山田悦, 半場祐子(京都工芸繊維大学)

 街路樹は町並みを彩るだけでなく、遮光、ヒートアイランド防止、CO2吸収、大気汚染物質の吸着などの機能を果たすことが期待されている。京都市でも沿道には様々な高木、低木の並木が見られる。大気汚染をはじめとする都市環境ストレスは光合成機能低下をもたらすことが知られており、樹種によってその影響が異なることが考えられる。そこで、大気汚染の指標として道路交通量を用い、交通量の多寡による光合成機能変化を、京都市内でよく見られる街路樹であるイチョウ、ヒラドツツジ、シャリンバイ、アジサイの4種間で比較した。調査地点は隣接する道路の交通量が異なる左京、西ノ京、壬生、大宮の4地点を選択した。2017年8〜10月にかけて、各地点から採取したこれらの葉の光合成機能を、Li-6400(LI-COR社)を用いて測定した。さらに、現在も環境基準を超える高い濃度が観測されているO3をパッシブサンプラー(小川商会)を用いて捕集し、イオンクロマトグラフ法を用いて各地点の大気中O3濃度を算出した。また、CN-IRMSにて、イチョウとツツジの長期の水利用効率の指標となる炭素安定同位体比を測定した。調査を行った4地点ついて、8〜9月にかけての高いO3濃度は交通量と正の相関があり、O3は交通量の影響を強く受けている事がわかった。樹種ごとに地点間の光合成パラメータの変化は異なったが、主成分分析の結果より4樹種全体でAmaxJVcmaxは強く関係しあっている事が確認された。O3濃度とAmaxが負の相関を示した樹種はなかったが、ヒラドツツジのAmaxのみ、交通量と公開データより得た各地点のNO2濃度に対し、負の相関を示した。また、水利用効率はヒラドツツジよりイチョウが高く、いずれも交通量の少ない左京で水利用効率が高くなる傾向があったことから、イチョウはヒラドツツジよりも大気汚染の影響を受けにくいのではないかと考えられる。


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