| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-094  (Poster presentation)

樹木と草本で収斂する個体呼吸スケーリング

*Mofei WANG(岩手大学大学院), 森茂太(山形大学), 芳士戸啓(山形大学), 相澤拓(山形大学), 黒澤陽子(山形大学), 斉磊(山形大学), 吉村謙一(山形大学), 山路恵子(筑波大学), 春間俊克(筑波大学)

多様なサイズの生物個体呼吸速度はそれぞれの個体サイズに応じて変化し、その変化は、Max Kleiberの法則「個体呼吸は個体重量の3/4乗倍に比例」に従うとされるが、多くの例外も報告され。今も、そのメカニズムを巡り様々な議論が活発に行われている。この法則のメカニズムは、生物個体内部の循環器官の構造をモデル化したspace filling fractal like geometryを用いたWBEモデル(West et al.,1997)による説明が試みられ、このモデルへの賛否両論がある。
これまで我々は、二次形成層をもち無限成長を行う多様な樹木の個体呼吸を実測して、その一般特性を探ってきた。しかし、二次形成層が無く1回限りの有限成長を行う草本を含めた陸上植物全体の個体呼吸についての検討は殆どなかった。
そこで本研究では、これら有限成長の草本と無限成長の樹木の個体呼吸を実測し、陸上植物としての類似点と相違点を検討した。材料として、イネ科草本植物5種類106個体の地上/根系、タケノコ83本、成熟したタケ27本の地上部全体の呼吸速度を自作チャンバーで正確に実測した。さらに、これらのデータと428個体の樹木個体呼吸(Mori et al. 2010 PNAS、+α)と比較した。
その結果、系統や成長様式の全く異なるイネ科植物、成長段階の異なるタケ類、世界各地の樹木を比較したが、個体呼吸と重量の関係は大きく分離せず、ほぼ同じ範囲にあった。小型のイネ科植物も小型樹木も個体呼吸は重量比例に近いが、成熟した大型タケ類と大型樹木は傾きが1よりも小さく、小型の「イネ科、樹木」~大型の「成熟タケ類、樹木」までこれらの個体呼吸の範囲はほぼ一致した。このように、有限成長でも無限成長でも陸上植物個体呼吸は類似した非線形傾向を示し、これは個体サイズに応じた個体呼吸の物理化学制御を示すと考えられる。


日本生態学会