| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-095  (Poster presentation)

ブナ科樹木萎凋病におけるアカガシの防御機構の解明

*染谷汐織(筑波大院・生命環境), 山路恵子(筑波大・生命環境系), 市原優(森林総研・関西), 春間俊克(筑波大院・生命環境), 中本幸弘(筑波大院・生命環境), 松本剛史(森林総研)

ブナ科樹木萎凋病は、1980年代より日本海側を中心として拡大してきた重要森林樹木病害の1つである。病原菌であるナラ菌(Raffaelea quercivora)は、カシノナガキクイムシ(Platypus quercivorus)によりブナ科樹木内部に伝搬される。枯死被害はブナ科15樹種に及ぶがナラ菌に対する感受性は樹種によって異なり、ミズナラ、コナラ、シイ類、カシ類の順に高い。カシ類の中でも特にアカガシ(Quercus acuta)は抵抗性が高く、枯死率が低いと知られている。化学的防御機構として、市原ら(2010)により、ミズナラ(Quercus crispula)のナラ菌に対する抗菌物質として2,6-dimethoxy-1,4-benzoquinoneが同定された。以上の背景を踏まえて本研究では、抵抗性樹種であるアカガシの本病に対する防御機構を組織学的及び化学的解析により解明することにした。
2013年7月に7-9年生アカガシにナラ菌を接種後、30日目に伐採し、組織切片観察及び抗菌物質の単離を行った。組織切片観察の結果、ナラ菌接種により変色部においてリグニン様物質の増加が確認され、物理的防御機構が確認された。辺材の接種部近傍の健全部から抗菌物質を単離した結果、 (+)-catechinの他に、bellericagenin B及びtrachelosperogenin Bが同定され、アカガシにおいて本病に対する化学的防御機構に寄与すると示唆された。またTLCバイオオートグラフィーによりアカガシにおいてナラ菌接種により健全部及び変色部の抗菌物質の産生パターンが変動することが示唆された。以上より、本病に対するアカガシの防御機構は変色部において物理的及び化学的防御機構が、健全部において化学的防御機構が作用していると示唆された。


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