| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-099 (Poster presentation)
東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故により、137Csの汚染が問題となっている。この137Csは土壌中の粘土鉱物へ強く吸着されるため、植物が吸収しにくい形態で存在していると考えられている。しかし、植物が137Csを吸収するという報告は多数存在し、その報告の一つに、内生菌の関与を示唆するものがある。内生菌が産生するAl錯体形成物質が土壌中のAlと錯体形成することで、土壌に強く吸着している137Csを溶出し、植物が吸収する可能性が示唆されている。そこで本研究では、高い137Csの蓄積が確認された日本固有種のキク科コウヤボウキ属多年草であるオヤリハグマを対象植物とし、本植物から分離した内生菌の代謝産物によるAl錯体形成能を精査することで、内生菌が137Cs蓄積に与える影響に関する知見を得ることを目的とした。
本研究の調査地は福島県伊達郡川俣町山木屋地区の未除染の落葉広葉樹林 (40 m×25 m) とした。調査地で自生する主要な林床植物6種類の137Cs濃度を測定した結果、オヤリハグマの根において高濃度の137Csが検出され、根域土壌から植物体への高い吸収移行が確認された。また、オヤリハグマ根には一般的な植物と比べ高濃度のAlが含まれることを確認した。さらに、オヤリハグマ根から高頻度で分離されたCryptosporiopsis属糸状菌およびColletotrichum属糸状菌においてAl錯体形成物質を産生することが確認された。以上の結果から、内生菌が産生するAl錯体形成物質によって根域土壌から137Csが溶出されることで、根における高い137CsとAlの蓄積に関与する可能性が示唆された。これらをより精査するために、高いAl錯体形成物質産生能を有する内生糸状菌株の代謝産物を用いて調査地土壌からの137Cs溶出試験を現在進行中である。