| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-165 (Poster presentation)
サンゴ礁魚類群集は,餌や生息場所に特化した種で構成されているが,基本的にはランダム群集だと考えられている。本研究では,ランダム群集で説明可能な石垣島白保(浅い礁池)の小リーフ群において,スズメダイ科魚類10種を対象に5分間の個体追跡行動観察を繰り返し,空間利用パターンの詳細を調べた。ドローン(Zerotech社 Dobby)を用いて海上から近接4リーフの空撮を行い,個体毎の行動圏を空撮画像上に描き,リーフ内外の滞在時間を記録した。糸状藻食で種間縄張りを持つ「クロソラスズメダイ(以下「スズメダイ」を省略)」(n=8),「ハナナガ」(n=6),「ダンダラ」(n=20)の縄張りを確認し,「ハナナガ」のみリーフ内滞在時間が長いことを明らかにした。「ダンダラ」は,リーフ縁を一時的隠れ場所,砂地を主な生息場所としていた。雑食の「ミナミイソ」(n=30)は,「ダンダラ」とは避けあうが,種内縄張りを示し,隠れ場所としてリーフ縁を利用するがリーフ外滞在時間が比較的長かった。藻食で動物プランクトン食の「ネッタイ」(n=32)は枝サンゴの窪みを利用し,「ハナナガ」と避けあうが,種内縄張りを持ち,リーフ外滞在時間が長かった。枝サンゴポリプ食の「アツクチ」(n=28)は,リーフ内滞在時間が長く,種内縄張りを示した。動物プランクトン食で藻食の「ミスジリュウキュウ」(n=27)は枝サンゴを隠れ場所として利用したがリーフ外滞在時間が長く,他種と行動圏を重複した。動物プランクトン食で糸状藻食の「クラカオ」(n=28)と植物プランクトン食の「デバ」(n=1),藻食で動物プランクトン食の「ルリ」(n=2)は,リーフ外滞在時間が長く,リーフ上層部やリーフ間に群がりを形成した。ニッチ化が進んでいるのに,なぜランダム群集になるのか,リーフの形状とリーフ間移動,実現ニッチの観点から議論する。