| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-166 (Poster presentation)
地球気候変動とその生物学的プロセスへの影響の解明は、現在進行中の課題である。一方、微気候の変動に対する群集の反応が場所ごとに異なる場合が、最近見いだされている。類似の気候変動に対する群集の反応が場所ごとに異なる場合、広い地理的規模の環境変動に対する群集の反応の統計的モデリングは難しくなる。そこで本研究は、種の個体数変動に基づいて群集の反応を予測することで、この問題の解決策を提案する。つまり、各種の個体数変動が気候データによって予測することができ、そのような予測を群集を構成するすべての種について行うことができれば、微気候の変動に対する群集の反応が場所ごとに異なる場合であっても、広い地域に渡って群集の反応を予測することができると考える。
本研究は、群集変動のサイト間変異という今まであまり注目されてこなかった現象に焦点を当て、韓国の白頭大幹山脈におけるオサムシ科甲虫群集の長期観測データを用いて、上記の予測を実証的に検証した。まず、各地点でロガーにより継続的に記録した微気候データを用いて、種レベルの個体群変動を予測するモデルを各種について推定した。その結果、種によって個体群動態に影響する環境要因が異なることを確認した。次に、各種のモデルによる個体数の予測値をボトムアップ的に積み上げて、各調査地、調査時期毎に予測される群集組成を再構築した。このデータを用いて、群集変動を直接予測する一般的なモデルとどちらが実際に観察された群集変動をうまく予測できるかを比較した。この結果に基づき、気候変動に応じた群集変動予測における、群集の反応が空間的に変異することの影響について議論する。