| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-174  (Poster presentation)

厚岸湖における養殖カキに付着する動物群集

*橋本真理菜(北大・厚岸臨海実験所), 難波瑞穂(北大・環境科学院), 仲岡雅裕(北大・厚岸臨海実験所)

 北海道東部の厚岸湖内のアマモ場では、稚貝を付着させたホタテの貝殻をロープで吊るす垂下式と呼ばれる方式でカキ養殖が行われている。しかし本来アマモ場内に存在しないカキの人為的導入は、アマモ場の生物群集に影響を与えていることが懸念される。そこで本研究では、カキ養殖がアマモ場の動物群集に与える影響について、カキ養殖場付近と離れた地点のアマモ葉上動物群集、カキの貝殻に形成される動物群集を種レベルで比較することで検証した。
 厚岸湖内の養殖場付近で、カキの種苗を導入して1ヶ月後の6月と、3ヶ月後の9月に、アマモの葉上無脊椎動物と養殖カキに付着する無脊椎動物を採集用ネットに入れてアマモや養殖カキごと採取した。採取されたサンプルを実験室に持ち帰り、葉上動物とカキの付着動物の種数と各種の個体数を計測した。採取した地点間および種苗導入後の時間経過による動向を見るために分類群別で比較後、種レベルで無脊椎動物の総個体数、種数および類似度を比較した。
 アマモの葉上動物群集の総個体数と種数については、養殖カキからの距離による地点間での有意な差は検出されなかったが、養殖カキに付着する動物群集との比較では、有意な差が検出された。種構成においては、養殖カキからの距離の異なるアマモ場地点間、アマモ葉上と養殖カキの間、および種苗導入後の時間経過に伴う有意な変異差が検出された。
 本研究では、養殖場付近の葉上動物群集より養殖カキに付着する動物群集の種数が多かったが、これは、アマモ場よりその周辺の硬い構造物の方が種数が多いことを示す先行研究結果と一致した。種構成や個体数においてもアマモ場内での差よりも養殖カキとアマモ場間での差の方が大きかった。養殖カキでのみ確認される種も観察されることから、養殖カキはアマモ場内で独自の生息環境を生物群集へ提供していると考えられる。


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