| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-179  (Poster presentation)

竹食スペシャリストであるジェントルキツネザルの腸内細菌叢

*澤田晶子(京都府立大学), Isabelle Clark(デューク大学), Onjaniaina M Ramilijaona(アンタナナリボ大学), 早川卓志(京都大学, 日本モンキーセンター)

「バンブーリーマー (bamboo lemur) 」とも呼ばれるジェントルキツネザルは竹食に特化した小型霊長類である。年間を通じて利用可能な竹を主食とすることで、他種との採食競合を回避できるなどのメリットが得られる一方、繊維質が多く消化困難な竹は栄養面で重大なデメリットをもたらす。同サイズの霊長類の多くが消化しやすい果実や昆虫を主食とする中、竹を選択的に食べるジェントルキツネザルは極めて異質な存在である。おなじ竹食スペシャリストのパンダは大型化することで代謝率を低下させ咀嚼能力を向上させたが、ジェントルキツネザルがそれとはまったく異なる戦略で竹食に適応しているだろうことは想像に難くない。非常に大きな盲腸をもつことジェントルキツネザルは、特殊な腸内細菌を獲得し消化能力を向上させたことで竹食に適応したのではないかと推測した。本研究では、マダガスカル共和国・ラヌマファナ国立公園にて同所的に生息する野生ジェントルキツネザル3種(ハイイロジェントルキツネザル、キンイロジェントルキツネザル、ヒロバナジェントルキツネザル)の糞を採取し、次世代シークエンサーで網羅的に細菌種を同定した。その結果、竹への依存度が最も高いヒロバナジェントルキツネザルは、他の2種とは明らかに異なる腸内細菌をもつことが明らかとなった。竹への依存度が大きく異なる環境条件の個体間での比較もおこない、採食生態と腸内細菌叢における類似性および相違点について議論する。


日本生態学会