| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-183 (Poster presentation)
鳥類の卵は、細菌やウイルスなどの病原体が卵内に侵入することを防ぐさまざまな生体防御機構を備えている。卵殻表面は環境と直接接触する鉱化されたワックス状の最外層で、ヒドロキシアパタイト結晶、多糖類、脂質、および糖タンパク質からなる可変的な薄いクチクラ層で覆われている。しかし、卵殻表面を覆うクチクラ層を構成している脂質が細菌の侵入を防ぐ効果については、これまでほとんど注目されてこなかった。
そこで本研究では東海大学札幌キャンパスとその周辺の小中学校に仕掛けた巣箱で回収した、孵化に至らなかったスズメPasser montanus の死卵を対象とし、常法に従って卵表面の脂質を抽出・分析し、卵表面にどのような種類の脂質に含まれているかを同定し、エステル結合を持つ脂質をメチル化して、脂肪酸メチルの総量をガスクロマトグラフィーで定量的に評価する方法を用いて、鳥類の卵表面を覆う脂質の定性・定量評価を行う方法を確立することを目的とした。
アセトンに卵に浸し抽出した後、アセトン溶液を濃縮乾固し5mℓのクロロホルムで溶解した。1/5量(1mℓ)の溶液で薄層クロマトグラフィーを用いて定性評価した結果、卵表面はステロール、ステロールエステル、トリグリセリド、ジグリセリドといった脂質で覆われている可能性が高いことが判明した。4/5量(4mℓ)の溶液でガスクロマトグラフィーを用いて定性評価した結果、飽和脂肪酸(C14、16、18)が検出され、卵表面1㎠あたり15.7nmolの脂肪酸に覆われていると推定された。