| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-188 (Poster presentation)
複数オス交尾は精子を通じたメスをめぐるオス間競争である精子競争を生み出す。近年、精子競争が繁殖形質の進化をもたらす強い淘汰圧となることが明らかになってきている。個体群や種の精子競争の強さを評価するためには複数オス交尾頻度を知ることは必須であるが、繁殖行動の直接観察が困難な野生個体群では、複数オス交尾頻度を知ることは難しい。そこで分子生物学的手法の発達により観察可能になったマルチプルパタニティ(一腹の子の父親が複数いること)の頻度を、複数オス交尾頻度の指標として、精子競争の強さを議論することが増えている。しかし一腹産子数の少ない哺乳類や鳥類では、マルチプルパタニティ頻度は複数オス交尾頻度だけでなく、交尾オス間の受精確率の偏りの影響を強く受けると考えられるため、マルチパタニティ頻度の差をそのまま複数オス交尾頻度の差とすることには問題がある。そこで、本研究では、マルチパタニティ頻度が大きく異なる2種の野ネズミ、アカネズミ(高マルチプルパタニティ)とヒメネズミ(低マルチプルパタニティ)の複数オス交尾頻度を、マルチプルパタニティ頻度、一腹産子数、受精確率の偏りを考慮にいれて推定を試みる。実測できない受精確率の偏りについては、マルチプルパタニティ一腹内の父性の偏りの推定をおこない、その値を用いて考慮する。この結果から、この2種のマルチプルパタニティ頻度の差は複数オス交尾頻度の差によるものなのか、それともそのほかの要因によるものなのか検討する。