| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-196 (Poster presentation)
集団内、集団間の表現型のバリエーションを環境や遺伝的バリエーションと比較検討することによって、その表現型の機能と進化可能性について推測することがある。しかしながら、単純な量に還元すると、そもそもの属性が把握できなくなる表現型(形など)のバリエアーションを把握することや、複数の表現型のバリエーションを統合パターンとして把握することは難しく、こうしたパターンの把握は、表現型の機能やその進化可能性を論ずることに先立つ一つの研究テーマとなる。
エゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)は幼生期、高密度環境で発生する共喰いとともに形態バリエーションが表現形可塑性によって拡大され、集団メンバーが捕食機能の異なる2つの型(「共食い型」と「非共食い型))に分化する(Cannibalistic Reaction Norm (CRN))。それぞれの型は、頭や鰭の形態に特徴がある。「頭部形態と鰭形態のバリエーションが、互いに関連性を持つか?」は、体全体の形態の統合性を論ずる出発点となる問いである。
幾何学的形態解析のランドマーク法は、形態を複数の幾何学点のベクトルデータとして捉える。ベクトルデータセットで捉える2つの形態の共分散性を定量化することによって、形態の統合的バリエーションを分析する方法の一つにPartial Least Square (PLS)解析がある。
PLS解析によれば、共食い型、非共食い型はそれぞれ、頭部形態と鰭形態のバリエーションが共分散構造によって結びついており、両部位の形態バリエーション間に関連性が見出される。本発表では、共食い型と非共食い型が、形態バリエーションの統合ルールを共有しているかを分析する方法を考案し、幼生の発達形態を二分化させるCRNが、形態バリエーションをどのようにコントロール統合しているかを検討する。